読書感想文
いろいろあるたびに日大病院が近所でとても助かっております。
小学五年生の頃だったと記憶しておりますが、あたくし毎晩のように臀部に強い痛みを覚え寝ながら泣いていたことがありました。
心配したおふくろが日大病院に連れて行ってくれて一応「坐骨神経痛」の診断を受けたものの、お医者さんの言うところでは特に問題はなく思春期によくみられる成長痛の一種だろうと。
それでも一か月くらいは痛かったけれども徐々に消えて、治まってみれば忘れてしまうくらいのものでありました。
けどこれが女の子であったなら体の変化は男の比ではなく、出る症状はもっと多岐にわたり複雑であったことでしょう。
で、ですよ
もしもこれが何らかの予防接種を受けた後で、しかもお医者の見立てでそのワクチンの後遺症だと言われたとしたら疑う余地があったでありましょうか?
なんつってもプロの意見なんだから。しかも「な~にこの時期よくあることだし、多分に精神的なものでもあるんですよ」なんて言わない患者に寄り添う?良い先生?と評判の人だったらなおのこと。
さらに同じような子供たちやその親たちに引き合わされて「これは薬害問題です!」なんてんで支援者が現れるやら国家賠償訴訟起こして弁護団がつくやら・・・。
病は気からと言われるようにそうなったら勉強嫌いなのも頭が悪いのも(あたくしのことですよ)全部ワクチンのせいだみたいな?
反対に自然に治ったなんて言ったら裏切り者扱いとかね。
この本に書かれていることを煎じ詰めれば要するにそういうことなのかもしれません。
バックグラウンドにあるのはかつての水俣病やスモン病など国家の認識の遅れによって被害が拡大した薬害問題への反省で、網の目が細かすぎるため本来スルーされるものまで引っかかってしまうという。
そしてそれを飯のタネにする人、不安をあおることが商売になるマスコミ、母と娘の間にある特殊な親子の感情などが絡み合い小児科医であれば日常的に接する様々な少女たちの身体症状が科学的エビデンスではなく感情論で問題化されていくという。
象徴的なのは名古屋市がこの問題を受けて実施した我が国初となる大規模な追跡調査です。
被害者?側の申し立てにより実施された調査結果は子宮頸がんワクチン接種者と未接種者における健康被害(被害と呼べるものかは別として)の比較において、双方差がないどころか未接種者により多く(もちろんごく少数)それが見られたというものでした。
どんなものであれどちらか向きのバイアスがかかるこの手の話で、被害を証明する方のバイアスが強くかかった調査が逆の目に出た結果、名古屋市はこれを正式発表せずいつのまにかうやむやに埋めてしまったのです・・・・。
子宮頸がんで失われる命は毎年約3000人、摘出される子宮は約1万個だそうで、風評により国が「積極的接種」の自粛としてワクチン接種が事実上ストップして10年。
ネイチャー誌が主催、公共の利益に関わる問題について健全な科学とエビデンスを広めるために、障害や敵意にさらされながらも貢献した個人に与えられるジョン・マドックス賞を日本人で初めて受賞した医師でもある著者はその十年で救えるはずだった10万個の子宮をこの本のタイトルとしました。
どこかの都知事さんが「安全と安心は違う!」なんて言ってましたっけ。
日本の夜明けはまだ遠い。