寒さの思い出

ある匂いを嗅いで昔の思い出が甦るということがありますね。以前区民プールの前を通りかかって、カルキの匂いを嗅いだ瞬間子供のころの夏休みのことが突然堰を切ったように溢れ出たことがありました。

 

昨日の夕方直売所の看板をしまいに石神井川沿いの道を歩いていたら少し風があって寒く、西の空は夕焼けの残照を残してオレンジ色、そこから東の空にかけては濃い群青色から黒みがかるグラディエーションで夜と夕暮れの狭間でありました。

でね。鼻にツンとくるような寒気を嗅いだとき少年時代のある場面が鮮やかに思い出されたんであります。

 

あたくし夢想癖と放浪癖を併せ持つ腰の落ち着かない小僧でありまして、一年中半ズボンはいて自転車漕いではフラフラとほっつき歩いておりました。目に写っていたのはなんてことない町や川土手の景色でも、頭の中は西部の荒野でありました。

で、ふと我に返ると道は家から遠く離れ冬の早い落日は遠き山の端を染めんとする頃。

「いけねっ!早く帰らないと怒られる!」てんであわてて家路をたどるときの心細い、それでいてどこか甘酸っぱいようなあの気持ちをね。これやっぱり寒くないと違うんですな。

 

昨日その短い時間だけ、あたくし実にピュアでありました。

ああ、汚れちまった悲しみに・・・。

 

なんだこりゃ?