映画「息の跡」
直売会翌日のきのうはまたも良いお天気で特に午前中はぽかぽかの外遊び日和でしのに、あたくし映画を見に行きまして。
東中野ポレポレで上映中の映画「息の跡」は、陸前高田宴会で毎回ご一緒して知り合いになった佐藤種屋さんの日常を追ったドキュメンタリーであります。あたくしミニシアターはお初、満席に補助席まで出る盛況でございました。
回りの方からすごい人だと聞いてもどうすごいのか知らなかったんですが、これ見てよく分かりました。
佐藤さんはあの津波で跡形もなく流された店舗跡に震災後まもなく瓦礫で建てたお店を独力で再開し、過去の津波の記録がその度次の津波で失われてきた現実に鑑み自分の手で未来に残る記録を作ろうと、独学で学んだ英語を駆使して世界に向け発信し続けているという。
若干23才にして震災後三年間に及んだ陸前高田での生活を通し初の長編映画製作になる小森はるかさんのカメラは、佐藤さんの日常生活を淡々として追いながら特別感傷的になることもなく、それでいながら時にネット画面に語りかけ時に自らを鼓舞するかのように自費出版した著作を音読するその姿から逆にいいようのない悲しみを浮かび上がらせておりました。
佐藤さんの勉強と著作は英語のみにとどまらずスペイン語、中国語にまで及び、しかしそもそもはあまりにも悲しみが大きすぎて日本語では書けなかった真情を内包しつつ売り上げ度外視の重版を重ねているそうです。
五年に渡った手作りの仮設店舗の高台移転に伴い再び自らの手で店を解体した最後、映画はみかんの空き缶で手掘りしたという井戸からポンプを取り外す印象的なシーンでラストを迎えます。大空をバックに掲げられた揚水パイプは、佐藤さん語る気仙魂を象徴するかのように高く屹立しておりました。
上映後は小森監督とフォトジャーナリスト安田菜津紀さんのミニトークショー。
タイトルの「息の跡」とはバスを降車した乗客が窓に残した曇りのようなかつてそこにいた人の残した痕跡のことで、失われた人々の記憶を未来に残していきたいとの志を現したそうです。
まだまだ彼の地の復興は端緒に着いたところですが佐藤さんには長きに渡り本当にお疲れさまでしたと言いたい、そして改めて少しでも関わりを持ち続けて及ばずながら応援していきたいとの思いを新たにしたことでございました。
と、きれいにまとめてはまたぞろいい人を演じながらその一方、映画の後は中野まで足を延ばし飲んで食べて飽食の都の片棒を担いだんであります。相変わらず底の浅い男
ただご一緒したお友達の方がせめてものご支援とばかり、佐藤さんの本を買ってくださっていたのが軽薄なあたくしにとっても救いとなりましたかね?ありがとね